元ヤン知佳の美貌録 ”ネトラレ” 検索結果
疑惑 : 疑惑 「夜這いの果ての御落胤」
あらすじ
「本家が呪われたぞ~、気違いが出たぁ~」
30戸にも満たない小さな、穏やかな入沢村が騒然となった。
村でも神童で通っていた本家、足立家の跡取り、庄左エ門がどうしたことか突然高台から真っ逆さまに飛び降りた。
幸いなことに、崖下にはその年、本家の母屋の屋根の葺き替えにと、刈り取られ高く積み上げられた萱があり、庄左エ門はその上に頭から落ちた。
本家の威厳を示したく胆試しに高台から飛び降りたんだろうと、崖下で萱を刈り集めていた村の衆はこの時は思った。
「あん、高台から躊躇いもせず飛びんしゃる。本家の若さんは大したもんじゃぁ」
「ほんにのう。旦那さんは葺き替えの屋根に、よう登りんしゃらなんだが、若さんは胆のええことで」
作業に従事していた分家の嫁、おえんも、今飛び降りたばかりの庄左エ門を頬を染めて見つめていた。
跡取りがなぜ、高台にいたかというと、
「庄左エ門さんに見張ってもらわにゃ、分家連中にゃ境がわからんけえのう」
「ほんに ほんに、長嶋さんとこ入り込んで刈ったりすりゃぁ、えらいことだでのう」
飛び降りた庄左エ門は跳び下りるまでの間声をからして下の連中に刈り取りを指示していた。
萱葺き屋根の吹き替えは、足立家では30年ぶりとなる。
曲がった萱や寸足らずの萱が1本でも混じってしまうと、そこだけ屋根が漏ることになる。
押さえ木に使う真竹にしても、わざわざ庄左エ門が出向き、竹やぶに入って選んで切り出していた。
寝る間も惜しんで体を鍛え、勉学にいそしんでいた庄左エ門。
「ありゃ~、若さんがぁ~」
おえんは助け起こすべく萱の山に近づき、素っ頓狂な声を出して退いた。
おえんの声に驚いて駆けつけた村の衆も、庄左エ門の姿に慄然とした。
口から泡を吹き、眼はあらぬ方向に向かって飛んでいた。
顔面は蒼白で、行動ものろのろと、見当もつかない方向によろめく、第一、口走る言葉が理解できなかった。
表情までもが一変していた。
神主に坊主とおおよそ村周辺で医について心得のあるものが呼び寄せられ、事に当たったが回復が望めないどころか、悪化する一方で、終いには埒が明かんと座敷牢に入れられた。